(5)100%たとえ話『植物星から来たお花星人 お花レモンちゃん』その5

一話目
二話目
三話目
四話目




花びらの中から出ている顔でコミュニケーションを取りながら、元気に花粉を振りまき、花の香りで蜂が寄ってくる、お花レモンちゃん。地球の人間社会に適応しようとしてる。

暖房と水のある家に住み、養分のサプリメントを買うために、企業に入って働きます。



『お花レモンちゃん』は、家の弟妹たちに、新聞を取ることにした。

弟妹たちは、知らない言葉や情報を見つけると、自分たちでスマホやテレビから調べることが出来るようだったからだ。


「これなあに

試しにコンビニで買ってきた新聞を弟妹たちに見せると、中身も見ているが案の定、新聞紙を手で触ってみて、ひらひらと波打たせてみて、興味を持っていた。

『木』という、地球の植物の大先輩の亡骸から出来たことを『お花レモンちゃん』から説明すると、全員、固まって聞いていた。

「人間はね、地球の植物を、刈って食べるだけじゃなくて、こうやって情報伝達にも使うの。『木』は、根から枯らされてしまうんじゃなくて、切り株が残されて、そこからまた黙って、生えてくるの。それが地球の植物の使われ方なのよ。スマホのように、ダウンロードを待たなくても、大量の知識が読めるのよ。社会の中の人たちの、裕福な人たちのことから、貧しくて困ってる人たちのことまで、まんべんなく、知れるの。スマホのように、好きな話だけポチッとして読んで、終わりじゃないの。人間社会のことを知るには、今は新聞のニュースがちょうどいいんじゃないかと思うの。」

「ああ、良かった。新聞になった『木のおじいちゃんたち』は、しんでないんだね

『オシベ』『セント』『ネクタ』たちは、気を取り直して新聞を読み出していた。『ヨウヨウ』は回りをグルグル走り回っていた。

走る時に抱え歩いていたピンクの芋虫ぬいぐるみは、抱え疲れた『ヨウヨウ』の手から、いつの間にかリビングの床に滑り落ちて、転がっていた。

「毎朝、届けてもらうように注文していいわね。」
「すごい。毎朝読めるの
「テレビでも勉強、スマホでも勉強、それに新聞でも毎日新しい勉強ができるんだ
「勉強いっぱいできる



家の中の家具配置を考えた。

リビングは、人を入れるかもしれない場所だから、フローリングのままにする。花粉が落ちる家だから、掃除がしやすい。

水の食事はリビングで飲む。こぼれても拭きやすい。キッチンテーブルなんて無い。

二つ目の部屋の中に、子ども部屋を作る。テレビを置く。家具屋へ行く。引き出し型ケースボックスを買い、弟妹たちの服を揃える。

大判のラグマットを買う。布団が要らない『お花レモンちゃん』一家は、ラグマットの上に6人で寝る。時々花粉を洗濯機で洗う。

『ヨウヨウ』が走り、『メイメイ』が転がって遊ぶので、アパートの下の住人に迷惑を掛けないように100均で、ジョイントマットを買って子ども部屋に敷き詰める。

キッチンコンロもレンジも冷蔵庫もいらない、ソファも、飾りもいらない、ミニマリスト風で、見掛けは人間で言うおままごとのようで、でも満たされてる家。



『お花レモンちゃん』の会社。

後ろから、年若い男性社員の肩を叩いて、中年男性社員たちが小声で忠告してきた。

プリッコが週末の婚活で手痛い敗戦して来たらしい。敗戦はいつもしているけれど、今回若い女性に取られた相手は、海外と日本を行き来する富豪のお医者だったらしい。

「ちょっかい出されないようにな。」
「どうしたらいいかを、うまくやれよ。うまーく。」

「うまくが、さっぱり分かりません。」

「オレたちに都合悪くなく。」

  ……直接の業務連絡をするなと言うことですか

書類を運びながら、廊下で若者と中年の男性社員たちは会話を続けた。

「いや違う。業務連絡して当たり前。しないとか社会人として恥ずかしいこと。」
「オレらも知らない。っていうかどーでもいい。」
「ていうか、ねーねーキミ彼女いるの

「いないです。いりません。」

「なにが趣味なの 車とか

「持ってません。いりません。」

「じゃなに楽しみなの お酒は

「飲みません。」

「じゃ休みなにしてるの どこ遊びに行くの

「遊びません。」

「じゃなにしたいの

「家で自由にします。」

だから意見も考えも無い。社内が協力し合っていなくてもどうでもいいし、関係ない。

「最近増えてるって噂は聞いてたけど、こんなミジンコ系男子って呼ばれる人、本当にいるんだな。」
「今どきの教育は欲とか無くてもいいものとして教えてるのか

若い男性社員は書類を届け終わり、中年男性社員たちと別れて、デスクへ戻るために、扉を開けた。

バインダーとリモコンが飛んできた。派手な音を立てて扉にぶつかってから、二つとも彼の足元に落ちてきた。

鬼のような形相のプリッコが、『お花レモンちゃん』の胸倉をつかんで揺すって叫んでいた。

若い男性社員は扉に手を掛けると、そのまま閉めた。

若い男性社員が戻ってきたのは一時間後。

プリッコは『お花レモンちゃん』を立たせたまま語り続けていた。

「人間の仕事っていうのはね、心と心で解り合って進めるものなの。『お花ちゃん』が人間の心、解ってないの、自分で分かってる

「すみませんでした。」

「謝れとは言ってない はい、かいいえ、で答えろと言ってるの 」

「ブエックシッ………ヘックシッ………」「……ハックション……ハーックション

『お花レモンちゃん』にストレスが掛かると、花粉が増えて、オフィスの社員たちのくしゃみにますます拍車がかかる

「これからもっと分かるようにします。」

「何か月経ったと思ってるのよ プリたちがどんな気持ちで許してあげてるか分かってる どんなに迷惑掛けられてるか分かってる ねえ『お花ちゃん』は自分がハラスメントされてるって思ってるでしょ ねえねえ思ってるでしょ ねえねえ 違うんだよっ なにが違うのか『お花ちゃん』に伝わらないのが腹が立ってしょうがないの

プリッコはくしゃみが出ない。


オフィスの社員の一人が、口をハンカチで覆いながら、年若い男性社員にそっと耳打ちした。

「来月予定だった、ハックション……同じ系列の会社と合同でする案件ね、向こうの社との打ち合わせ資料作りに要るデー、ハックション……タを、もともとプリッコさんに集約するはずだったの。でもしてなくって、……ハーックション………案件担当者もプリッコさんに確認取ってなかったのよね。だから打ち合わせの資料、ハックション……の下準備ができてなくって、午後に私たち全員と上司に見てもらいながら手直しして仕上げるアポを取っ……ハーックションていたのに白紙になって、上司は出掛けたい用事があったのに、わざわざ日にちをずらしていたのに、ハックション……白紙になったってだれも言いに行きたくなくて、プリッコさんが植物星人に責任取らせようとしているの。……ハックション……ハーックション……だから午後は違う動きしてていいわ。」

「ふーん、じゃ関係無い……ハックション……関係無いですね、ハーックション 」

オフィスの空気は、『お花レモンちゃん』のせいにして責任を押し付ける方向で、賛成の空気というか、思考停止することに決定していた。

でも、具体的にどう上司に話をさせるのか、だれも考え付かないので、『お花レモンちゃん』に考えさせたがっていた。そう命ずる役を、全部プリッコに任せて、その場の社員全員が無視を決めていた。

「みんな『お花レモンちゃん』と仲良くなりたいって、だから『お花レモンちゃん』が会社を嫌っても、嫌っても、許して、受け入れてあげていたのに そうなんだよー みんなそうなんだよー だからどうして自分の性格の悪さを認めないの 認めて謝るところから始まるんだよコミニュケーションって 」

「コミニュケーション」の間違いなんて構ってる暇も無く、なにも知らない上司がアポどおり、オフィスに打合せ資料の手直しと仕上げの指示を出しに来る時間が、こくこくと迫っていた。

業務として関わっていない『お花レモンちゃん』が根拠の無い冤罪を引き受けるように責められる、という準備だけが準備されていた。

「すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。」

人間たちの言い分は全面的に肯定しなければならない。


植物星人だから。


植物星人だから。





さかのぼったデータ集めにオフィス全員の残業になった。

身体を動かして気分転換をしたい社員たちと、年若い男性社員が、夕食代わりの軽食を買い出しに行った。

『お花レモンちゃん』は水で食事になるが、新入社員の心掛けとして「行きます。」と申し出た。でもくしゃみが出ない場所で身体を動かしたい人間の社員たちに断られた。


オフィスに来た上司は社員から、するはずだったことができない説明を聞き出しながら、くしゃみを連発した後、『お花レモンちゃん』がみんなにくしゃみをさせるせいで、業務の連携が取れなかったという理解に落ち着いた。

社員の結束の足並みを乱す責任を痛感するように、とかなんとか『お花レモンちゃん』を叱責した後、事態を修正するなんの指示も出さないまま、いなくなってしまった。


電灯やビルや行き交う自動車のライトで明るい夜の街を歩きながら、社員たちはプリッコの話をせずにはいられなかった。

「こうやって、だれかを巻き込んで感動巨編舞台を作っちゃったんだよな。」
「担当のターゲットをだれかに注目させて怒らせてから、心を入れ替えるように迫ったり、自分だけいい人になって恩を売るとか。何人も。」
「そう。感動巨編の主役になりたい。しかもみんなで舞台をしたい。」
「10年前からずっとだ。寂しいんだろうけどこっちは大迷惑だ。」
「帰りたい。定時に帰りたい。」
「また帰りたい、をみんなで言わなきゃいけないなんて。植物星人のせいだ

『お花レモンちゃん』が目立つから。プリッコが絡みたくなっちゃったじゃないか。

植物星人のせい。悪いのは植物星人が会社にきたから。



10年前、コミュニケーションスキルが高い社員がいて、酒の席でプリッコから聞き出した発言があった。

すぐにはばれない業務をわざとしないでいたり、連絡を回さないなどして、集団でターゲットを責めるように仕向けてから、ターゲットを辞めさせたり、病気にしたりした履歴を、

面白ろおかしく順番に並べてから、「首謀者はぜーんぶ、プリッコちゃんだね すごいね 怖いね 」と、おだてて調子に乗せるマジックを使って見せたのだ。

「わたしは知り合ったらみーんなのこと知って調べて構って食べちゃいたいの きゃはっ

プリッコは、珍しく自分の有責を認めた。


これは、伝説に残る爆弾発言として、スキルが高い社員がいなくなったあとも社員に語り継がれていた。

そして、彼らが軽食を買って会社に戻ると、

プリッコは、退勤していなくなっていた。





深夜。

会社から電車に乗って通う距離に離れている『お花レモンちゃん』一家のアパートに、人影が近づいていた。

ガシャガシャン……ザラザラ……大きな缶と、缶の中から粒状の物体が立てる音が響く。

人影は、大きな缶を持ち歩いていた。

「『お花ちゃん』に犯人扱いされたの~ 責められたの~ えーんえーんえーん………ウフフフフ……大事なお仕事仲間の『お花ちゃん』の大事な物を壊したりしないよー……ウフフフフ………除草剤持ってても、ただのお塩持ってても、プリじゃないよ 信じて アハハハハハ………みんなとの話し合いを助けてあげたじゃん。他の人にあなたからなじんで行かないから構ってあげたのに………アハハハッ……そんな恩知らずなんだあ……アッハッハッハー 」

妄想が暴走したプリッコだった。
自分でトラブルを仕掛けておきながら、『お花レモンちゃん』にこれから言い負かされるかもしれない、報復されるかもしれない、という被害妄想も同時で膨らんでいく。

妄想の恐怖の自給自足、その結果………………




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