(4)100%たとえ話『植物星から来たお花星人 お花レモンちゃん』その4

一話目
二話目
三話目




花びらの中から出ている顔でコミュニケーションを取りながら、元気に花粉を振りまき、花の香りで蜂が寄ってくる、お花レモンちゃん。地球の人間社会に適応しようとしてる。

暖房と水のある家に住み、養分のサプリメントを買うために、企業に入って働きます。




「おはようございます。有休をありがとうございました。」

『お花レモンちゃん』はお辞儀をしてオフィスに入る。

少しだけいた人たちが、「ハークション」とくしゃみを始める。社会人のお約束、お返しの挨拶なんて植物星人には返って来ないものになった。

それから次々に出社してくる人たちが、入るなり「ハークション」と合唱を始める。

『お花レモンちゃん』は、ショッピング街で買ってきたカステラを机に配った。

悪意は無いけど机の間を練り歩く『お花レモンちゃん』の周囲2m以内の人たちはくしゃみが止まらない。

わざと『お花レモンちゃん』の視界に入る位置のゴミ箱に、個包装されたカステラが飛んできて、一発でホールインワンした。

周囲の人たちから小さな拍手が湧く。

『お花レモンちゃん』は拍手をした人たちに「すみませんでした。」と、カステラを配ったことも謝罪した。無視され、反応は無かった。


席へ戻った『お花レモンちゃん』の元に、バタバタバターッっと派手な音をさせて飛び込んできた、人影があった。

「『お花レモンちゃん』来たの そうよね地球のビジネスマンは空気読んでる余裕なんて無いんだからね 働いて当たり前な人間社会を理解してきたじゃない 」

けたたましい大声がオフィスに響き渡った。

「これからみんなとなじんで、みんなと仲良くなって、しゃべれるようになればいいじゃない 道は自分で切り開いていくものだから。努力 行動に移すんだよ でも人が受け入れてくれる効果的なやり方じゃなくちゃ駄目

やっとしゃべりの途切れ目が来た。『お花レモンちゃん』は口を開いた。

「あの、もしかして、プリッコさんですか 昨日はお気遣いをありがとうございました。」

顔かたちはたしかに成人女性のそれなのに、形容しがたい髪色に、下瞼がキラキラしている少女のようなメイクの女子に、『お花レモンちゃん』は頭を下げた。

プリッコはそれには答えず、話を続けた。

「わたしと『お花ちゃん』は、だいたい似ている仕事内容なのよ。技術者なの。特別だからあ、人手不足感はあるけど、要領のいい働き方は自分で見つけないと。でぇ、そういうのが出来るようになると、わたしは定時で帰れるようになったの。」

「はい。」

「はい、しかないの なにか察しないの

人形のように愛らしく作った表情から、一転して、プリッコの目つきは変わり、顔の皮膚が斜め上へ吊り上がっていった。

『お花レモンちゃん』の耳に、オフィス内から小声の会話が聞こえてきた。

「プリッコめ。10年は大人しかったのに。」

「また虫が騒いでるのか。植物星人のせいで 余分な仕……ハークション………事一切してないくせに調子いいわ

「……ハクション………腹立つわ


「もしかして、私がお休みいただいたことで、ご迷惑を掛けたんでしょうか。すみませんでした。ありがとうございました。」

『お花レモンちゃん』は頭を下げながら聞いた。

「呼ぶの疲れるの。『お花ちゃん』でいいわよね 文句ある あるんだー 悲しいわー あんた先輩がこういった時に返す言葉無いの 知的生命体のくせに 能力使わないの さぼる気 手抜きする気 人間ナメてる だから他の企業で雇ってもらえなかったんじゃないの 自分が原因作ったんだよ 自分が悪いんだよ わたしまくし立ててるように見えるでしょそんなつもり無いから だから今日1日かけて反省内容を考えて言葉にして言えるように。聞かせてもらいに来るからねじゃーね 」

オフィスの引き戸はバーンと音を立てて閉められた。

「おいうるせーんだよ

男性社員が、『お花レモンちゃん』に向かって大声を出した。

「………ハークション……メンヘラ怒らすんじゃ………ハークション……ねえよ こっちに関係無いんだよ ………ハークション……仕事の邪魔すんな てめぇへの苦情はてめぇ………ハークション……でなんとかしろやこの植物星人………ハークション……」

「すみませんでした。」

人間の言い分は全面的に肯定しながら働かなければならない。


植物星人だから。


植物星人だから。





オフィスの中で、年若い社員が隣の中年社員に小声で話しかけていた。

「それにしてもあのプリッコさんって人、すごいですね。なんでくしゃみ出ないんだろう。」

「アレルギーっていうのは、だれでも、なる可能性だけはあるけど、必ず全員なるとは限らないからな。」

「ものすごく丈夫な体質なんですね。」

「丈夫でもなんでもいーんだよ。どーでも。会社にとってはメンヘラをなんとかしてもらいたい。」

「そうなんですか 今までそんなに存在感無かったですから、知りませんでした。」

年若い社員の反対側に座っている社員が、話に入ってきた。

「お前、最近入って来たから知らねーべな。10年前は、ひどかったんだよ。そりゃもう業務に支障が出まくるわでムカついたんだ 後で話してやるか 昼に社食行くか





「……そんなにー

社員食堂。

若い男性社員は、『お花レモンちゃん』が来る前に、その担当職にいた社員の退職人数を聞いて、箸が止まっていた。

プリッコは、技術職として入社してから、直接の連携が必要な担当社員を筆頭に、目を付けた社員と次々にトラブルを起こし続けていた。

「いいから食べれ。まだ事件の数々あるから。話は長くなるから。」

中年男性社員たちが、いつの間にか3人集まって一緒に食べていた。

「いいから豚の生姜焼き食べなさい。午後も仕事あるんだから。なんなら、退勤してから、一杯やりながら続き聞かせてもいいし。」

「それだけ、事件がよりどりみどりなんだよなあ。思い出したくないけど思い出す。」

「せーっかく、ここ10年は婚活に執着してて、社内では静かになってたのに。………植物星人のせいだ。なんで人事は雇ったんだ

「あの仕事はオレらじゃやっぱり肩代わりできないもん。出来ても嫌だし。帰りたいし。」

若い男性社員は、そこでもう、うんざりした。

「メシは食べますけど、なんかお話はもうお腹いっぱいになる予感がしてきました………。」


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