(3)100%たとえ話『植物星から来たお花星人 お花レモンちゃん』その3

一話目
二話目




花びらの中から出ている顔でコミュニケーションを取りながら、元気に花粉を振りまき、花の香りで蜂が寄ってくる、お花レモンちゃん。地球の人間社会に適応しようとしてる。

暖房と水のある家に住み、養分のサプリメントを買うために、企業に入って働きます。



『お花レモンちゃん』は5人の弟と妹たちを連れて、会社から出た後、若者が沢山いるショッピング街へ出た。

100円均一ショップで、毎日水を飲むためのコップを選ぶ。

植物の食事は水と日光。命を繋ぐための水コップは植物星人の必須アイテムになる。

一番年上の弟は、『オシベ』と名付けられた。

5人は全員、名無しで森で生きてきたので『お花レモンちゃん』は列車の旅をしながら名前を考えたのだ。

『オシベ』は、人間社会の生活にひたすら目を見張っていた。

巨大なジョッキグラスを手に持ち、ガラスの美しさに魅入っていた。

「オシベー、一回の食事でそのコップは大きすぎる。」

1.5リットルは入りそうなジョッキグラス。居酒屋で、客同士が飲み物を注ぎ合う時に使う。もちろん100円ではなく、もっと高い値段が付いている。『お花レモンちゃん』はほど良い大きさの食器を使うよう弟に教えようとした。

「だって、次の日も飲めるように水を溜めておかないと。」『オシベ』は答えた。

「溜めたり取っておかなくていいの。人間の住居は、水が昼も夜もパイプから出せるから。」『お花レモンちゃん』は、水道のことをこう表現した。

妹二人は双子のようだった。『セント』香り。『ネクタ』花蜜。二つとも、花が花であるために欠かせない武器だ。

よちよち歩きの弟はまだ言葉も話せない。『ヨウヨウ』葉葉。

下半身がまだ種子の殻にはまってる末の弟は『メエメエ』芽芽。

4人には、落としても割れないアクリルコップや、スケルトンのプラスチックコップを『お花レモンちゃん』が選んだ。

「ねえ、あれも栄養になる物 」『セント』と『ネクタ』が指さした先には、ぬいぐるみが山積みになっていた。

「栄養ではないよ。人間は、生き物みたいなふわふわした物体を持って、遊ぶの。心の寂しさが埋められるのよ。」『お花レモンちゃん』が人間の文化を教える。

5人の弟と妹たちは、『お花レモンちゃん』の回りに集まって、一言も聞き逃すまいとして聞く。

「遊ぶってなあに 」「ふざけること 」

「栄養にならないのに 」「でも勉強になるんだって。」

「言葉なんて、通じ合っているうちに覚えたよね 」「話し合いながら考えてること見せたりもらったりするって、植物たちにしかできないの 」

「シッ 」『お花レモンちゃん』は弟と妹たちに静かにさせた。

植物星人たちは、会話もできるが、思考を見せたり、受け取ったりすることができる。テレパシーが当たり前に使い放題なのだ。伝達して欲しいことを画像でも知ることが出来るため、植物星人の学習スピードはものすごく早い。

ただし、思考の中で新しいものを開発したり、関連付けてもっと発展させることなどは得意ではなく、いわば、コピーの知識を増やすことが得意である。

『お花レモンちゃん』は、そんな植物星人の中でも、人間の思考もコピーして学習する能力を持っていた。だから会社に採用されるほどパソコンの操作を覚えられた。

弟と妹たちは、『お花レモンちゃん』の期待通り、まず『お花レモンちゃん』の知識を、スポンジが水を吸い込むように次々とコピーして覚えていった。

覚えながら人間社会を実際に見て回ることで、理解も進んでいった。

人間社会では、親の知識のコピーだけだと、複雑すぎて適応できない。だから学校に集まって学ぶ。学校が終わったら、友達というなんとなく小グループに集まった同士で、面白いことが無いかショッピング街に遊びに来る。

5人の弟と妹たちは、さっそく人間の子どもの真似がしたくてたまらなくなった。

『ヨウヨウ』が、ぬいぐるみの山によちよち歩いて接近していった。『セント』と『ネクタ』が追いかける。『オシベ』と『メエメエ』も後に続く。

「どれが欲しい 」『お花レモンちゃん』は『ヨウヨウ』に聞いた。5人の中で、『ヨウヨウ』が一番ぬいぐるみに興味を感じたようだと感じた。

「アイ 」『ヨウヨウ』は、両腕に抱えて気になるぬいぐるみを『お花レモンちゃん』お姉ちゃんに示した。

大口を開けて大笑いするピンクの芋虫。数本の脚が生えている。

『メエメエ』を抱っこする『オシベ』と同じスタイルで、『ヨウヨウ』は自分の物になったピンクの芋虫を抱っこして歩こうとした。

しかし、はやる気持ちに反して、ピンクの芋虫は『ヨウヨウ』の幼児の体には大き過ぎたので、間もなく、ぬいぐるみは『セント』と『ネクタ』が交代で持って歩いてあげることになる。

『オシベ』が『メエメエ』のお守りを楽にできるように、『お花レモンちゃん』は抱っこ帯も買った。

『お花レモンちゃん』が会社に行ってる間にもし緊急事態になったら連絡を取り合えるよう、自分の物の他にスマホももう一台買った。弟妹を代表して『オシベ』に持たせた。

『メエメエ』には、水を飲むための哺乳瓶と、水風呂に入れるためのタライ。

『セント』と『ネクタ』は、音楽に興味を持った。

電子音ばかりで作られたらしい音楽をしばらく視聴していたが、「面白そうだけどなんか違うねえ……」と首をかしげ合っていた。

視聴場所を移しているうちに、『ネクタ』がモーツアルトを見つけた。納得したらしい表情になった。

『セント』は、どれもイマイチのようで、お気に入りの音楽ジャンルを見つけられなかった。

『ネクタ』が慰めた。「セント、またここに聞きに来よう。好きな音がきっと見つかるよ。」

『お花レモンちゃん』も言う。「うちへ帰ったら、私のスマホでインターネットに繋いで色んな音楽を試しに聞きましょう。ここでは無理だけど。」

6人は、人間社会の建築物の間を縫うように歩き、電車に乗って『お花レモンちゃん』のうちへ向かった。

自動車の排ガスや、クーラーの換気口から生ぬるい風を浴びることもあったが、励まし合って、気持ちを持ち直して、『ヨウヨウ』と『メエメエ』を守って歩いて行った。



『お花レモンちゃん』のスマホから音が鳴った。

弟と妹たちが、水の食事を中断して一斉にスマホに注目した。

『お花レモンちゃん』も使い始めたばかりのラインが出した、着信の音のようだった。

〖こんばんは。〗

送信者は会社で『プリッコ』と呼ばれている女子社員からだった。

〖新しい家族が増えた1日、ご苦労様でした

有休をもらった分、元気を出して、また明日から仕事を頑張ってくださいね

わたしたちは『お花レモンちゃん』の分の業務も手分けして進めておきました。

でも休んだ人のお仕事を助けてあげるって、人間社会では当たり前のことで、❝お互い様❞って呼ぶんですよ

だから、これからは『お花レモンちゃん』も感謝を忘れずに、他の人が休んだ時に、自分の分の他にももうちょっとだけ頑張って、お仕事をこなしてくれると嬉しいなあ

でも、植物がしおれてくと困るだろうから、無理し過ぎない分量でいいからね 〗

『お花レモンちゃん』は、表情を無くしたまま、無言で読んだ。

しばらくうつろに目線を宙に泳がせてから、やっと小さな独り言をつぶやいた。

「なんて返したらいいんだろう。でも、❝はい❞ しか無いよね。私は植物星人だから。」

❝はい。明日からまた仕事を頑張らせていただきます。よろしくお願いします。ありがとうございました。❞


植物星人だから。

上から目線で来られても、抵抗してはいけない。

相手の文面を、全面的に肯定する返信を書かなければならない。

相手は人間だから。

こちらは植物星人だから。


植物星人だから。





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