(2)100たとえ話『植物星から来たお花星人 お花レモンちゃん』その2

一話目


花びらの中から出ている顔でコミュニケーションを取りながら、元気に花粉を振りまき、花の香りで蜂が寄ってくる、お花レモンちゃん。地球の人間社会に適応しようとしてる。

暖房と水のある家に住み、養分のサプリメントを買うために、企業に入って働きます。



『お花レモンちゃん』は、一日一本しか停まらないローカル列車のとある駅に降り立った。

道路がかろうじてあるけれど、ひび割れたアスファルト。

ひびから野太く生えている雑草。

そんな雑草が地平線近くまで、点々と連なる風景。

人が一人も通らないそんな道路を、『お花レモンちゃん』はテクテクと歩いて行った。

どれくらい歩いただろうか。

ローカル列車の駅がはるか地平線近くまで遠ざかった頃。

道路を挟んだ両側には、見渡す限りの牧草地が広がった。

新緑と枯草色が気まぐれに入り混じる景色の中に、点々と小さな丸が見えてきた。

その小さな丸こそ、数えきれない数の牧草ロールだった。

『お花レモンちゃん』は、鼻に神経を集中し、植物にしか分からない花粉の残り香を探す。

全身をセンサーにして、植物の気配を探す。過去にいた気配も、難しいけれど、探す。

意を決して、『お花レモンちゃん』は、自分の決めた方角へ向かって歩き出した。

いくつも、いくつもの牧草ロールの横を通り過ぎた。

行く手には、牧草地の終わりと、うっそうと草木が茂る森の入り口が出現した。

牧草地の端で、一つの牧草ロールの前に『お花レモンちゃん』は立ち止まった。

『お花レモンちゃん』は、その牧草ロールに意識を集中した。

でも、茶色い枯草色一色のそれから感じられるのは、過去に仲間がいたらしい気配のみであった。

直径が『お花レモンちゃん』の身長ほどある牧草ロールをほどいて無数の枯草の中から、仲間の残骸を探すことは、ほぼ不可能であることを『お花レモンちゃん』自身が感じ取っていた。

水の補給もせずに、ひたすら歩いてきた『お花レモンちゃん』。人間でいうと脱水症状の危険があるほどの、消耗した状態になりつつあった。

しかし、森の中から、カサカサと音がしたのと、『お花レモンちゃん』が、気配を感じて森に視線を向けた時は同じであった。

森に歩み寄る『お花レモンちゃん』。

森の奥からだんだん大きくなる、足音。


森の中から、『お花レモンちゃん』と同じ種類の花粉が、煙のように流れ出してきた。

続いて、『お花レモンちゃん』より一回り小さい花びらに囲まれた、可愛らしい少年の顔と、少年の緑の両腕に抱かれた、全身緑色の赤ん坊が、森の外に現れた。

種から発芽したばかりなので、赤ん坊の下半身はまだ種の殻から出てこれず、殻に包まれていた。

続いて、もっと小さな花びらに顔を囲まれた、幼い少女が二人、

続いて、全身緑色、身体と同じ緑色のつぼみの中から小さな顔が覗く、よちよち歩きの坊やが出てきた。


植物星人の子ども5人と、『お花レモンちゃん』は、何秒間か見つめ合った。

見つめ合うだけで、植物たちはありとあらゆる、必要な情報共有ができてしまった。


「 お ね え ち ゃ あ あ あ ー ん 

『お花レモンちゃん』の体には、5人の弟と妹たち、新しい家族が束になってしがみついていた。

「大変だったね。頑張ったね。小さな体で、助け合ってきたんだね。兄ちゃん一人で、赤ちゃんたち守るの、大変だったでしょう。人間から隠れるの、大変だったでしょう

「兄ちゃん」と呼ばれた、一番上の弟の涙が止まらない。

「もう大丈夫よ。太陽浴びて暮らそうね。足りなかったら夜も電気が光るよ。水は飲み放題浴び放題よ サプリメントで足りない栄養も摂れるよ。みんなで勉強もしようね 地球でみんなで暮らしましょう





『お花レモンちゃん』の会社。

「……ハクション……ハークション

「……ハクションハクションハクション

「……ハークション……『お花レモンちゃん』の有休、今日までだったよね 会社に来てるの

会社の同僚たちは競うようにくしゃみを連発していた。

「……ハークション上の方で指示でも出したのかな。警察に聞かれ……ハークション……た時のために、上司にも経緯を……ハークション……ハークション

「報告しておけって……ハークション

噂をすれば、の法則通りだった。

「今日まで有休ありがとうございました 上のかたたちに結果を報告するように言われていたので、報告に来ました。また明日から出てきますので、よろしくお願い………」

会社の中は、同僚たちのくしゃみの合唱で、『お花レモンちゃん』本人の言葉はかき消され、だれにも聞こえなくなってしまった。

「こんにちは

「にちは~」 「にちは~ あのね~きょうからおねえちゃんといっしょにくらすの~

「ダーダー

弟と妹たちが次々に扉から顔を出してあいさつした。

「植物星人の子ども……ハークション

「おねえち…………ハークション……下のきょうだいってこと

「連れてきたの……ハッ……ハッ………ハークション

『お花レモンちゃん』は、場を察して取りつくろう言葉を言う。

「5人中2人はまだつぼみですから 花粉はまだです。わたしも気を付けて、出勤前にはちゃんとシャワー浴びて、扇風機の風を浴びて、余分な花粉を付けて来ないようにしますから。ご心配かけてすみません。それではこれで失礼します。有休ありがとうございました。」

扉を閉める『お花レモンちゃん』を追い掛けるように、同僚のだれかのつぶやきが投げつけられた。

「花粉出す前ならクビチョンパ





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